親の家を片づける①行動に移す前に「理解」から始めましょう

前回までは「リフォームの前の整理収納」をテーマに書かせていただきました。

今回も引き続き整理収納の話題を「福祉住環境整備」の視点で取り上げさせていただきます。

住宅改修として工事を行う際にも、まず解決しなければいけないのが整理収納納問題です。時には、整理収納と、収納家具のレイアウト調整を行うだけで、工事にまで進む必要が無い場合もございます。(※とくに介護保険の対象にならない、軽微な体の衰えの方)

また、すこし整理収納関連の記事が続きますが、どうぞお付き合いくださいませ。

 

*現代のお年寄りはモノ持ちが良いから…*

バブルが起こる前、まだ私が子供だったころは今に比べるとモノの価値が高く(収入と物価の比でみた場合)、

「安いからとりあえず買って、飽きたら捨てればいい」

という考えはなく、モノを丁寧に最後まで使い切っていました。転んでズボンの膝をすり切らせて帰ると、その都度祖母が花の刺繍をして繕ってくれたことが、とても懐かしい思い出です。

今のお年寄は、そんなモノを大切に使いたいという理念を持ちつつ、安価で手軽にモノが手に入る今の時代を生きています

そのため、

「まだまだ使えるのに捨てられない」

「これはきっと、後で使えるはず」

という気持ちで、様々なものを手放せず所有してしまうのです。

また、バブルを経験しているため、その当時に高額な食器や、高級なブランド物の衣類などをたくさん購入したが、今は使わなくても高価だから捨てることが出来ずしまったままになっているお宅も多いでしょう。

 

そして、徐々に増えていった沢山のモノ達は、家族が減ったことでできた空き部屋を納戸として自分たちの居場所を確保し、さらに仲間を増やし続け、いつしか、いつも生活をしている居室までモノがあふれ、動線をふさぎ移動しにくくなったり、うっかり転倒をする原因となってしまうのです。

では、まるで生命体が細胞分裂や子孫繁栄を繰り返すがごとく、どんどんモノが増えていくのはなぜなのでしょう?

それは、先に収納されたものの存在を忘れてしまったり、探す手間より購入する方が早いという悪循環が生じているため。

こうした悪循環は若い人でも多々起こることなのですが、お年を召した方の場合探そうという気力と、体力が落ちているため、より顕著におきてしまいます。

「なんで片付けられないの?」

「なんで同じものがいくつもあるの?」

と、イライラする前に、まずは年を取ることにより変化する体の状態を理解しましょう

 

*お年寄りがの行動がゆっくりなのはなぜか*

今年で50歳になる私は、徐々に体の変化を感じるようになってきています。疲れが取れないし、目は見難くなってきているし、体の肉という肉が地球の重力に対して白旗を上げ始めています…(涙)

50代でもこんな具合なのですから、70代になるとどうでしょう?

福祉住環境コーディネーターの教本には、20代の筋力を100%としたとき、70代になると70%に落ち、平衡感覚も20代の人の25%まで落ちると記載されています。(参考文献 福祉住環境コーディネーター2・3級ポイントレッスン 新生出版社:発行)

筋肉と聞くと「足腰の衰え」

だけに目が行きがちですが、呼吸をするために活動する横隔膜などの呼吸筋も同じように低下します。そのため息切れしやすく、疲れやすくなります。

こうした体の変化が起こっているため、動くことが億劫になることは致し方ないことなのです。

今ご覧いただいていらっしゃる方が、親御さんの家の片づけを考えていらっしゃる場合、まずはこの点を理解しておいてあげるとイライラしても仕方ないと思えるようになるのではないでしょうか?

 

*急に物が増えたり、片付かなくなってきたら…*

ここまでは、まだまだお元気な方を例に記載してきました。

が、片付かなくなる理由は肉体の低下の問題だけでなく、認知機能の低下すなわち「認知症」による場合もあります

認知症の初期症は

  1. 同じことを何度も訪ねる…さっき聞いたばかりのことを聞いたり同じ話を繰り返す
  2. ものをなくす・隠す…置き忘れやしまい忘れ、大切なお財布やお金などもしまった場所を忘れる
  3. 無関心になる…料理をしなくなったり、趣味に関心がなくなる、部屋が乱雑になる

(参考文献:認知症の安心生活読本 鳥羽研二:著 主婦と生活社:発行)

です。

特に2と3をご覧になっていただくと、

モノをなくしたり、置き場を忘れたり=モノが増える要因

無関心になる=部屋が片付かなくても気にならなくなる

と、整理収納が出来ない要因がそろっていることに気づきます。

もし、今まで部屋をきれいにして過ごしていた親御さんの家が、急に掃除もせず乱雑になってきた、モノが増えてきたら(やたらと同じものが買い足されるなど)などの症状が現れたら、専門医への受診を検討された方が良いでしょう。早期発見により適切な治療を受けることが出来ます。(甲状腺機能小低下症や、脳腫瘍、慢性硬膜下血腫、正常水頭症、薬による副作用、ビタミン欠乏症など、原因要素を治療することによって認知症が改改善するケースもあります)

「認知症」ではない、軽微な認知機能納低下については後ほど記載させていただきます。

(この章の参考文献:「認知症の安心生活読本」 鳥羽研二:著 主婦と生活社:2009年発行)

 

*高齢者の整理収納は若い人とは少し違うから…*

親御さんの家の片づけは

「若い方が容易にできることが、少し難しくなってきた…」

と、ご自身でも体力の低下に気づき、合わせてメンタル面も少し落ちているときに行うことが多いため、通常の整理収納のセオリーでは進められないことがあります。

私自身がやってしまった失敗も交えてお届け致します。

 

 

日々の暮らしの中で、何気ない生活動作のにくさを感じられたら、お気軽にご相談ください

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