「軽井沢森の雫」が考える木との向き合い方

寄り添う木の運営元軽井沢森の雫は、「木と暮らしのデザイン」をテーマとしてデザイン活動を行っております。もちろん住空間を検討するときには機能性を優先すべき場合も多々あり、木材より適した建材を選択することもございます。が、それでもインテリアの中心や、材料のベースの選定はできる限り「木」をご提案し、活用させていただいております。

今回は、そんな軽井沢森の雫の木との向き合い方を記載いたします。

 

*木は生き物*

森の雫が活動する軽井沢町は、以前に比べ森林も減ってきてはいますが、まだまだ自然は多く、樹齢の経った大木をいたるところで目にすることができます

春には花だけでなく、芽吹いたばかりの梢が淡い黄色やピンク色で山を染め上げ

夏には力強く茂った木の葉が木陰を作り、爽やかな風を作り出し

秋にはたっぷり光合成をおこなった木の葉達が艶やかな色へと変化をし

冬には木の葉から得た栄養を蓄え木枯らしの中堂々と立つ

日本の四季は、まさに木々の営みそのものと言えるでしょう。

 

普段私たちが扱う木は、製材されたものが多いのですが、日々こうした木の姿を眺め、時には開発のため倒木された姿を目にすると、

「この幅の材木は、こんなに大きく成長した木でないと取れないのか…。」

「あの大木からいったいどれくらいの材料が取れるのだろう?」

と、思いを巡らさずにはいられません。

木は生き物。材木は人が木から受けた恩恵です。

昨今広い幅の木材が少なくなってきております。それは様々な場所で材木として利用できる大きな木が少なくなってきていること、すなわち森林が減ってきていることを意味します。だからこそ、縁あって手元に届いた材料は、できる限り最良の形で使いきってあげることが、木を扱うものの使命だと思って活動しております。

※開発などで単発的に切られた木を家具や建築用にするには、製材所までの輸送経費(本数が少ないと材料単価は必然的に上がってしまいます)、製材、乾燥のための数年の保管(脂や反りの強い樹種によっては人工乾燥が必要なものもあり)と、流通する製材を使用するより費用も時間も大幅にかかります。切った木を活用して家具を作りたいとのご相談をお受けすることもありますが、その点ご了承いただければと存じます。

 

*材料との出会いは一期一会*

森の雫では小さなインテリア小物や、結婚式の記念アイテムの設計製作も行っております。一つのシリーズを数多く制作しておりますと、入荷した材によっては、

「同じ木なのにこんなに違うのか?」

と、びっくりするくらい全く異なる木のように仕上がることがあります。

特に枝打ちをして、まっすぐに育てた木ではなく、広葉樹の場合は自然に悠々と育ったものが多く、針葉樹のようにまっすぐ木目の整った材料に出会うことはなかなかありません。でも、森の雫では出会った木との縁は、人との縁と同じく一期一会なのだと想っております。(特に針葉樹よりも長い時間をかけて育った広幅の広葉樹材との出会いは、より大切にしたいのです)

木は育った環境によって節や、割れ、虫食い、製材として活用されるまでの乾燥過程でカビが発生した後(スポルテッドといわれる木目に入り込んだ黒いシミや線)などの部位がございます。こうした特徴は彫り物などの場合マイナスの要因となりますが、森の雫では明らかに傷みの激しい部位、いずれ亀裂が生じることが予測できる部位は思い切って削除しますが、そうでない部位は「この材ならではの個性」として魅力的にデザインし、世界に一つしかないモノづくりを心がけております

大きく育った木が少なくなっている昨今。昔ながらの優劣の観念だけで決めつけ安易に廃棄せず、出会った木の素敵な個性を見つけ出し、最良の第二の人生(木生?)を与えてあげたいのです。

※一枚の板材でも、シラタといわれる木の表面に近い部分とアカミといわれる芯に近い部分の違いで全く別物のような色味になります。一般的にシラタより、アカミのほうが強度のある良材として使用されますが、森の雫では強度を必要とせず、なおかつ着色塗装を行う小物や雑貨の製作にはシラタに近い部位も無駄にせず活用いたします。また、樹種特有の木目も部位によって現れ方が異なります。

 

*否定でなく肯定をして魅力に変える*

軽井沢の木として有名なのが「唐松」です。

唐松は、浅間山の噴火によって荒涼とし、しかも極寒の浅間山のふもとでも成長することが出来た、落葉する松の木。新芽はやわらかい黄緑色で、秋になると真っ黄色に紅葉し、山を光り輝くように染め上げます。

この唐松、木材としては少々難ありの材料として有名です。それは反りが激しいため。自然乾燥した材料は打った釘を持ち上げるほど反ってしまうことがあります。また、ヤニが多く室内で使用していると節の部分などからベトベトとしたヤニがしたたり落ちることもあります。(俗にヤニツボといわれる節目からは、数年たっても出てくることがあります)その為、なかなか室内では活用されにくい材料として、住宅の構造部分での活用や、道路や水辺の杭などに限定されて使用されてきました。

また、立ち木の時には、雨のように降り注ぐ落葉はなかなか土に戻らず、一度堆積をするとす分を含み塊のようになり屋根やデッキを傷めるため、どうにも好まれません…。

が、この厄介者のように思われがちな唐松、材料としてはとっても魅力的な木なのです!!

厳しい冬を耐えた冬目はとてもしっかりとしていて独特の表情を生み出し、なおかつ比重も他の針葉樹などに比べると重くそして堅牢。しかも、価格的には桜や楢などのメジャーな材に比べると手頃で大好きな材料なのです…が、前記のごとく難あり…。でも、せっかく軽井沢の木なのだから使いたいと、活動当時はかなり悩まされました。

が、最近は人工乾燥でしっかりと脱脂させることで、反りの問題やヤニの問題も大幅に改善され、構造材としてだけでなくフローリングなどの内装材や、家具にも活用できるようになってきました。

とはいえ、まだまだ他の材料に比べると反りの問題は付きまとうため、森の雫では反りを逆手に取り生かした家具をデザインし、インテリアで活用する際は構造材として作られているラーチ合板を取り入れるなどの工夫をしています。

材の特性を生かすも殺すも、扱う者次第。惚れ込んだ材だからこそ、これからも活用の幅を広げていきます。

 

*もっと日本の木を使ったインテリアを広めたい*

日本の山は戦時中に、多くの木が軍事物資として切り出され、見るも無残な裸山になってしまいました。そして戦後、焼けてしまった住宅の供給に応えるべく、裸になった山に成長の早い杉やヒノキなどの針葉樹を人工的に植樹いたしました。

が、いざ住宅用材として使用可能な40年後になると、円高の影響や、住宅工法の変化もあり海外から多くの材料を輸入するようになり、その結果、木材の価格が低迷し必然的に林業が衰退してしまいました。

青々と茂った日本の山は美しいのですが、よく見ていただくと杉、ヒノキ、そしてこの長野県では唐松の人工林が広大な面積を占めていることに気づいていただけると思います。現在日本の山は育った木がそのままとなり、下草や低木が育たず、動物たちが育ちにくい環境となっております。また、針葉樹は根を深く張らないため、豪雨の際など土砂崩れを起こしやすい状況となっているのです。

チーク、アルダー、などインテリア雑誌で目にすることのある木の大半は、私たちが生産地の状況を知ることのない海外からの輸入材です。どの材料も確かに魅力的で美しいのですが、食品のトレーサビリティーを気にするように家具や内装材を選定することが、環境保全へとつながっていくことを考えていただけると幸いです。

私たち森の雫も提案する者の責任として、これからも真摯に向き合っていきます。

※チークはミャンマーの天然チーク林は過剰な伐採により激減をし、現在すべての地域で伐採が禁じられ、丸太の輸出も禁止されています。アルダー材も近年大変人気がありますが、資源が不足してきております。

 

ぬくもりある木のインテリアのご提案、無垢の家具の製作など

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