親の家を片づける②変化は最小限に

前回に続き親の家を片付ける際のポイントを、私自身の失敗談を交え記載させていただきます。

*母のキッチンを片付けたときの出来事*

キッチンは使いやすさと共に火を扱うスペースですので、安全な環境づくりが必要な場所です。(※後程、視覚をテーマに安全な環境づくりを記載させていただきます)

が、キッチンは家のどこの場所よりもモノの流入が多い場所であるため、いつの間にか在庫が増えたり、スーパーの袋や、ヨーグルトやジャムの容器、留めてあった輪ゴムなどなど、「再利用可能」なものが油断をすると大量増殖しやすい、収納危険地帯でもあります。

母のキッチンにも、

「あんたはすぐに捨てろっていうけど、いざという時に役に立つんだから!」

と、貯められたモノが既存の収納スペースに入りきらず、その上にさらにシェルフを買ってきて(収納棚とシェルフの二段重ね!!)、さらに収納用具を購入してスペースを作って…と、調理をする背後の壁面に不安定な壁面収納が出来上がっていました。また、脊椎圧迫骨折をしたことがある為腰が伸び切らず、年々床に近い位置にあるものを取る際に不安定な姿勢を取るようになり、気になっておりました。

しかも、震災以降地震も多くなっているため、このまま心配してもしょうがないと思い立ち、

「あたしが片づけるから、この日は予定入れないでね!!!」

と、少々渋る母を説き伏せ、片づけを決行しました。

前回にもお伝えしましたが、母のキッチンも「探すより買ったほうが早いから」で増えたモノ「まだまだ使えるから」と使わなくなったのに取ってあるモノが沢山出てきました。(「あんたの孫が出来たときに使えるでしょ!」と息子や姪っ子が小さかった時のお茶碗も出てきました…苦笑)

この時、注意したのは、

  • こちらの立場で一方的に否定しない
  • どんなものでも勝手に捨てない
  • 絶対にイライラしない

この3点でした。何よりも「片付け=不快なモノ」とせず少しでも楽しい気持ちで行えるイベントになるよう私なりに気を配りました。

母自身は体勢によっては不安定になる時があるものの、

「私より、70代後半の母のほうがしっかりしてるんじゃないかしら????」

と思う時があるくらい、心配になるような認知症状は無く活動的な人ですので、実際に片づけを始めると、

「あたしもやるわ!」

と、できる範囲で手伝ってくれました。そして完了後、処分することになったいくつものゴミ袋に入れられたモノや収納道具の数々を目にしても、

「ほとんどのモノを捨てることになるんじゃないかな~と思っていたわ(笑)」

と、清々した顔をしていました。

めでたし、めでたし…と、言いたいところなのですが…この後、私は失敗をしてしまったのです…。

 

*無意識の動作習慣はなかなか変えられない*

すっかり不要なものが無くなったキッチンは隅々まで拭き掃除も出来るようになったため、とてもすっきりしました。気がかりだった壁面のシェルフは、

「このままにしておいてほしい…」

ということなので、後程パートナーの山田に処分を行わない家具と家具の連結加工を行い、転倒防止のため壁面へもしっかり固定してもらうことで、今後は安心して使い続けられるようになりました。

そして、引き出しの中や、食器棚の中のモノもすべて出して一つ一つ捨てるかどうかの検討をしましたので、改めて収納することになりました。

その時、私はモノを収納する際のセオリー、

  1. 普段からまめに使うものは自分の目線の位置から腰の位置の範囲
  2. 次に使うものは腰から下の位置に
  3. 年に数回しか使わないものは目線より上

に合わせ収納を行い、母に新しい収納場所を説明して完了しました。

 

 

…と、ここまでは、良かったんです…いや、良かったと思っていたのです…。

 

 

数日後、母のところへ行くと、

「えっと、あれはどこだったっけ…なんだかわかりにくくなっちゃって…まあ、すぐに慣れると思うけどね(笑)」

と、調理中何度もモノを探していました。本人も慣れるといっており、

「まあ私だって置き場を変えたばかりの時は、多少戸惑うよな。」

と、しばらくはそんなものだろうと思っていたのですが、一か月たってみると使用回数に合わせて配置を変えたものが、なぜかまた元の位置に戻っていました

はじめは、

「どうして使いにくい配置に戻したんだろう…?」

と理解できなかったのですが、冷静に考えなおすと自分が大切なことを見過ごしていたことに気づきました。

 

*ご高齢の方の片づけは、セオリーよりもご本人の今までの生活を大切にする*

ご高齢の方の福祉住環境整備を行う際、普通のリフォームとは異なり注意しなければいけないことがいくつかあります。その中の一つとして、

引っ越しや急な模様替えを避け住み慣れた住環境を維持することの大切さがどの本にも記載されています。(「50代からのリフォーム」を推奨しているのはこのためでもあります)

これは高齢になると順応性や認知機能が徐々に落ちるため、若いころのように容易に新しい環境に適応しにくくなり、新たな生活の中にストレスが生じるようになってしまうため。

もちろんこのことは理解をしており、大きな模様替えを行うわけではないキッチンの片づけは当てはまらないと思っていたのです。

が、自分自身がキッチンに立ったときのことを考えると、調理をして盛り付けをする一連の流れは、いちいちどこに何があるかを考えずてきぱきと無意識で行っていることに気づきました。キッチンはどこの部屋より、無意識の動作習慣を行うことが多い作業スペースだったのです。(特に普段の食事は手早く行いたい為なおのこと!!)

結局、私が母のためにと思ってやったことは、反対に作業の流れを中断させ母のストレスを生んでしまっていたのです。元気でしっかりしているとはいえ、若いころと全く同じようにとはいかなくなっていたことに改めて気づかされました。感情的に怒りをぶつけるタイプの人ではないだけに、私に文句を言わずそっと自分の記憶に合わせ収納しなおしたのかと思うと、とても申し訳なかったです…。

では、どうすればよかったのか?

それは、片づけを行う前に今の生活を理解し、片付けた後も反映すること。具体的には、現状を細かく記録し(写真を取っておくと良いです)、片付けた後もできる限り同じ場所に収納しなおすことです。(引き出しの中のモノを別の位置に変えたり、棚の収納位置を変えたりしない。モノを処分して収納小物に余裕が出来たら、同じ場所にコンパクトにまとめなおすなど、ブロックで考え変化をさせなければ大丈夫です)

はたから見て

「こうすればもっと使いやすいのに…。」

と思ってもそこに危険性がない限り

「どうも使いにくくて…どうしたらいいかしら?」

と相談があるまでは見守ることも大切なのです。

 

*親の家を片付ける=不要なモノ(ゴミ)を処分し危険をなくすこと*

片付けるとはゴミを処分することと前に記載しましたが、ご高齢の親の家を片付けるときは特にその点を忘れないことが大切です。

すっきりとしてくると、親御さんを思う気持ちから、

「もっときれいにすっきりとした活用しやすい空間づくりをしてあげたい」

とついつい思ってしまうのですが、ご本人から相談がない限り行う必要はありません

「ごみを処分するだけで生活に変化は起るのか?」

と、思われるでしょう。ゴミが減るとまずは空気が大きく変わります。不思議なことのようにに思われるでしょうが、確実に爽やかになり、そして明るくなります。これは空気のよどみが取れ部屋の隅々に空気が流れやすくなるからだと思います。また、ぎっちりと要不要区別せずまとめて入っていたスペースに余裕ができるため、モノを取り出しやすくなり動作性も良くなり、不必要な買い物も減ります。

でも、インテリアを変えるわけではないので、大きな変化はありません。むしろ大きな変化は不要なのです

親御さんがまだまだお元気でご自分の生活を楽しまれているのであれば、それ以上は余計なお世話になってしまいます。どんなにご自分の価値観と会わなくても、親御さんにとっては長い年月とともに築き上げた自分の大切なお城です。場合によっては自尊心を傷つけることになりかねませんので、親御さんの気持ちを第一に考えるようにいたしましょう。

でも、時には親御さんと話し合い変化をしなければならない場合があります。それは、室内に潜む危険な場所に気づいたとき。ご高齢の方の家を片付ける際に、一番大切で気を配ってあげなくてはいけないのは何よりもこの一点です。

 

親御さんの家を片付けをどのように進めたら良いのか、既存の家具の使い勝手や活用方法など

お気軽にご相談ください